KS を知ろう 新聞購読のご案内 折込広告のご案内 KSのサービス スタッフ Blog 採用情報【キャリア採用実施中】 お問い合わせ

購読申込     0120-88-3746 FORM     折込専用 076-421-8686 E-Mail

スタッフBlog-アーカイブ-

ホーム > スタッフBlog > 気ままなブログVol.1『大コメ騒動』

気ままなブログVol.1『大コメ騒動』

Posted:2021年02月20日(土曜日)


「演出小道具としての新聞の使われ方(仮)」を語る気ままなブログ第1回。

前回のブログで意気揚々とテーマを掲げてみたものの、その後、新聞が出てくる作品になかなか出合わず、早速ネタ不足に陥っておりました。もちろん以前に観た旧作の中から引っ張ってきてもよいのだけど、何かしらタイムリーな話題がないとネタにしづらく…。

そんな中、ここで書けたらいいなと考えていた作品を観てみたら、ちゃんとありました、‘ 新聞紙 ’ が出てくるシーン。

というわけで、オール富山ロケ、富山県出身者が数多く出演している、富山の映画『大コメ騒動』をご紹介します。

この映画ではメインキャストのうちの3人が新聞記者ということもあり、新聞と密接な関係にあるお話です。史実としても、富山の漁村で起きたローカルな事件が全国各地に波及したのは新聞に大きく報じられたからな訳で、新聞なしでは描けない題材でもあります。

しかし、前回のブログに書いた通り、彼ら記者の存在はストーリーの本筋にかかわるので除外しまして。ここでは‘ 新聞紙 ’ が小道具として出てきたシーンについて語ることにしましょう。

映画の前半、井上真央さんが演じる主人公、松浦いとさんが新聞を手にしているシーンがあります。

「最近はコメを買いに行くたびに値上がりしている。不作で出回っている絶対量が少ないというのなら分かるけれど、自分たちが毎日仕事としてコメを運んでいるので、どう考えても有り余るほどにあることは知っている。なのに、なぜ価格が高騰して手に入れづらくなってしまったのか?」 理由を知りたかった彼女は新聞記事で事の経緯を理解します。近所に住む女性たちは彼女を取り囲み、口々に「なんて書いてあるの??」と問いかけますが、彼女は黙ったまま考え込んでしまうのです…

映画の舞台は1918年(大正7年)。

今期のNHK連続テレビ小説『おちょやん』でいえば、主人公の千代(おちょやん)が10歳の頃。おちょやんは家の事情でほとんど学校には通えず、久しぶりに登校してみても教科書を音読することができません。しかし、お芝居に興味を持ったことをきっかけに台本を読んでみたいと思うようになり、独学で読み書きを覚えます。その後は新聞もすらすら…どころか、誤植を見つけながら(!)読めるくらいになります。

つまり、当時の女性にとって公的な教育を受ける機会を得ることは容易ではなく、『大コメ騒動』のいとさんも女学校に進学できるくらいの学力があったにもかかわらず、家庭の事情で学業を諦めたようです。そんな彼女は漁村に住む同じような境遇の女性たちの中で、最も知性あるキャラとして描かれています。

さてここで。監督はなぜ新聞を読むシーンを作ったのだろうと考えてみます。(お忘れかもしれませんが、当方、演出の意図を汲み取って考察してみたい、というブログですので)

ひとつには、当時の世界情勢やコメ値上がりの理由など、予備知識のない我われ観客に説明したかったから。これは小道具としての新聞の代表的な使い方ですね。登場人物に台詞で言わせると不自然なことも、新聞記事をアップで見せて文字を読んでもらえば説明したいことが一気に片付きます。

もうひとつは、主人公のキャラクターの肉付けとして。新聞を読む、夫から本を贈られて喜ぶ、希望に反して進学できなかった過去を明かすという3つのエピソードをたたみかけ、彼女が知性ある人ということを強調しています。

では、そんな彼女を主人公にした理由は何でしょう?

もちろん、有名女優をキャスティングしたから、というほうの理由ではなくて(それは興行的な理由)、主人公のキャラ設定をインテリにしたほうの理由です。

コメディの場合、主人公は何もしていないのに、周囲に振り回されてドタバタが起こる光景を面白おかしく描いた作品もあります。しかし、それを除けば、基本的には主人公が自ら考えて意思をもって動いてくれないと、観客は共感するポイントを見失い作品の世界観から取り残されていきます。

この映画も、もし主人公自身は何が起こっているのかもよく分からず、誰かの口車と尻馬に乗ってウワーッと騒いで暴れていたという話だったら、観客としては「ハァ?」と言うしかありません。

いとさんが自分たちの生活を真剣に考え、周囲の人たちの家庭事情も客観的に捉え、もはや自ら立ち上がるしかないと決意した過程があるからこそ、観客は安心して共感できるのでしょうね。

最後に余談ですが、この映画の最大の特徴であるセリフの大半が富山弁だった件について、富山弁ネイティブとしてはひとこと感想を申し上げたく。

室井滋さんが演じる清んさのおばばさんは、役柄的にあえてのコテコテ感を出して荒っぽい口調で話すこともあり、ネイティブでも字幕を欲するレベル! 他県の皆さんは理解できたでしょうか?

一方、どなたでも聞き取りやすかったのではと思うのが左時枝さんが演じる鷲田さんの富山弁。こんなふうに話す人いる!という感じでハマっていましたね。

方言ならではの面白さが出ていたのは、左さんと、彼女の妹役の柴田理恵さんの会話! こちら、必見(必聴?)ですのでぜひ映画館でご覧あれ。

さて、2000字を超える長い長い駄文を最後まで読んでくださった方に大切なお知らせです。

サービスセンターが運営するオンラインショップ【とやまーと】では「越中米騒動」という名の焼酎を販売しています。

この歴史的事件が発端で合成清酒(酒税法による酒類の一つで、原料に米を使わないもの)が造られるようになり、全国的に広く飲まれるようになりました…という逸話をもとに名付けられた富山の地焼酎です。

映画を観た記念に、100年前の彼女たちに思いを馳せながら一献傾けるのはいかがでしょう。